テニス肘に対するMT-MPS
著書:藤野泰葉
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外側上顆炎(テニス肘)、回外筋
(症例紹介)
40歳代 女性 介護職
2週間前、自宅で家事をしていて、物を持ち上げた際に肘関節外側部に強い痛みを感じる。以前にも同様の痛みがあり、以来、物を把持した際などに軽度の痛みがあった。
(主症状・評価)
物を把持して移動させるような動作を行った際に鋭い痛みを訴える。
Thomsenテスト及び中指伸展テストは、軽度の痛みが誘発されるものの、主訴とは一致
しない。
安静時痛や腫脹、熱感等は認められず、下垂指などの神経麻痺症状も認められない。
前腕回外動作に徒手抵抗を加えることで強い痛みが発現する。
(治療・結果)
初診より3週間は週2回の通院。
治療ラインは、主に図Ⅸ-29。
上記施術ラインを行う中で、局所的に回外筋の治療を行う。
サポーター等は用いず、治療以外は一般的な前腕筋群のストレッチ指導のみ。
運動痛の減少と共に、治療を週1回とし、8回目(計5週間)の治療で、強い抵抗下でも自動運動が可能となった為、治癒となった。
(考察)
肘関節外側部での痛みは、日々の臨床の中でよく見られる症状である。その中には、徒手抵抗下で手関節や指関節の伸展を行っても痛みが認められない症例がある。そのような場合、今回の症例のように、回外筋が症状発現に深く関与していると考える。
また、このような症状の表れ方は、治療初期のみならず、当初、手関節や指関節伸展による痛みがあり、施術の結果、症状が緩解していく過程の中で認められる場合もある。
外側上顆炎と呼ばれる症例に対し、短橈側手根伸筋や指伸筋のみならず、回外筋を施術対象に加えることで、治療効果をより高めることができると考える。ただし、回外筋を治療する為には、その表層にある筋群を併せて治療する必要があることを付け加える。稀ではあると思われるが、下垂指を併発している場合、後骨間神経麻痺が生じている可能性があるので、鑑別が必要である。